身内の訃報はつらいものですが、それが「孤独死」となればなおのこと。どのような最期を迎えたのか、苦しくはなかったか、さまざまな思いが巡って混乱してしまうこともあるでしょう。そのような状況の中でも、葬儀や部屋の片づけなどするべきことはたくさんあります。今回は、身内が孤独死してしまった際の段取りについてお話ししますので、参考にしていただければ幸いです。
1. 突然、身内が孤独死。まず何をすればいい?
主に一人暮らしの住まいなどで、第三者に看取られることなくひっそりと亡くなる状況を指す孤独死。その発見者となるのは、親族・隣人・福祉関係者・配達人などさまざまです。ご遺族以外の人による発見・通報の場合、ご遺体の身元が判明次第、警察からご遺族に連絡が入ります。突然の知らせであればあるほど、頭が真っ白になってしまったり、これからどうすればいいか途方に暮れてしまったりするかもしれません。
警察から連絡を受けたあと、まずすべきことは概ね以下になります(事件性がない場合)。
- ■警察に出向き、亡くなったときの状況やご遺体の引き取りについて説明を受ける
- ■家宅捜索で回収された現金や通帳などを受け取る
- ■葬儀社を決める
- ■ほかの親族や知人に訃報の連絡を入れる
- ■孤独死現場清掃専門の業者に部屋の清掃を依頼する
それぞれの段取りについての詳細は、このあとの章でご紹介していきます。まずは落ち着いて、一つひとつ順番に対応していくようにしてください。
2. 警察から連絡を受けたあとに遺族がすべきことは?
通報が入ると警察は、住宅管理会社や解錠業者などの立ち会いのもと部屋に入ります。その後、ご遺体の確認、現場検証、検死(本人確認が難しい場合はDNA鑑定)を経て、ご遺族に連絡を入れるという流れが一般的です。
では、警察から連絡を受けたあとの段取りについて、具体的に見ていきましょう。
2-1. 警察に出向いて説明を受ける
まずは警察から死亡状況などについての説明を受けます。本人確認を終えていれば、ご遺体と死体検案書が受け渡されることになります。ご遺体発見後、事件性の調査のために家宅捜索が行なわれていますので、事件性がなければ回収された現金や通帳などもご遺族のもとに返ってきます。
ご遺体の引受人になった場合は、安置場所と搬送手段を確保しなければなりません。早急に葬儀社に連絡を入れ、一旦自宅に安置するなど今後の流れを相談しましょう。
2-2. 葬儀社と葬儀の内容を決める
依頼する葬儀社が決まったら、葬儀を執り行うか、火葬のみにするかなど、詳細の内容を打ち合わせします。当然ながら、オプションをつければつけるほど費用は高くなります。亡くなった方とご遺族の思いや、現実的に用意できる金額をふまえ、冷静に判断するようにしましょう。
孤独死の場合、火葬は亡くなった場所で行なうのが一般的。住民票のある地区での火葬は低価格または無料というケースが多いのです。火葬場や自治体によって異なりますので、葬儀社担当者に確認してみてください。ほかの地区へご遺体を移動させる際は、霊柩車での搬送費用がかかってきますので、注意が必要です。
なお、ご遺体を火葬するためには、役所に死亡届を出さなければなりません。通常この手続きは葬儀社が代行しますが、状況によってはご遺族が提出しなければならない場合もあります。その際は、死亡の事実を知った日から7日以内に、死体検案書と死亡届を役所へ提出します。亡くなった方の死亡地か本籍地、もしくは届出人の所在地の役所に届け出ればOKです。
葬儀の日取りや会場が確定したら、親族や知人などの関係者に連絡を入れましょう。具体的な葬儀の費用については、後ほどお話ししたいと思います。
2-3. 専門業者に清掃を依頼する
発見が遅れてしまったときの部屋の清掃は、特殊な手法や薬剤を使っての作業になります。通常の清掃業者では対応が難しいため、孤独死現場清掃専門の業者に依頼することをおすすめします。消臭・消毒・害虫駆除から、不要になった家財の引き取り、リフォーム、解体などまで行なっている業者もありますので、必要に応じて依頼するようにしてください。賃貸物件であれば、大家さんや住宅管理会社に相談してみましょう。
中には、高額な価格を提示してくる悪徳業者も存在します。不安を感じたら、複数業者から見積りをもらうなどして慎重に契約を進めるようにしてください。
とはいえ、まずは亡くなった方をきちんとお見送りすることが最優先。すぐにでも対処が必要な状況でないのであれば、葬儀後の対応でもよいと思います。
2-4. 葬儀後に行なう手続き一覧
お見送りを終えて一段落したら、残っている細かな手続きを進めましょう。
- ■国民健康保険・国民年金などの資格喪失手続き
- ■住民税・固定資産税などの納税手続き
- ■遺産相続手続き
- ■雇用保険の資格喪失手続き
- ■扶養控除の異動申告
- ■遺品整理
- ■賃貸物件の解約
- ■パスポートの失効手続き
- ■クレジットカードの解約手続き
- ■自動車の名義変更または廃車手続き
- ■運転免許証の返納
- 公共サービスの解約・精算手続き
- ■メール・SNSアカウントの削除
など
3. 葬儀にかかる費用はどのくらい?
3-1. そもそも、葬儀費用を支払うのは誰?
「誰が葬儀費用を支払うべきか」を定めた法律はありません。まず香典や弔慰金を費用にあて、不足分は喪主が支払うというのが一般的。亡くなった方に遺産があれば、相続財産から充当するケースも多いです。
ただし、孤独死の場合は、葬儀のほかにも部屋の清掃などさまざまな費用がかかります。そのことも念頭に置いたうえで、故人の身の丈に合った葬儀をあげることが最善だと言えるでしょう。
3-2. 葬儀費用の相場
近年、葬儀の形式は多様性を増しています。ある調査データ(※)では、葬儀社に支払う費用・飲食接待費・寺院に支払う費用を含めた葬儀費用の全国平均は199.9万円となっていますが、実際にかかる費用は形式によりさまざま。最近では火葬のみのコンパクトな葬儀も増えており、費用は数十万円程度が相場のようです。
(※財団法人日本消費者協会「第9回『葬儀についてのアンケート調査』報告書(平成22年)」より)
注意したいのは、葬儀社が用意している「○○円パック」というような定額プラン。金額が明瞭で気軽に選んでしまいがちですが、状況に応じて追加料金が発生したり、不要なオプションがついていたりするケースも多々あるのです。選ぶ際には、事前に内容をよく確認するようにしましょう。
3-3. 葬儀費用の内訳
では、葬儀費用の具体的な内訳を見てみましょう。希望と予算に見合った葬儀をあげるには、「何に費用がかかるか」をきちんと把握することが大切です。
【葬儀費用の内訳】
- ■葬儀の基本費用(祭壇、棺、遺影写真、供花、葬儀運営のための備品・人件費など)
- ■葬儀前にかかる費用(枕飾り、枕花、ドライアイス、遺体保管料など)
- ■斎場の使用料
- ■火葬の費用(火葬炉、霊柩車、休憩室など)
- ■通夜・火葬中・葬儀後の飲食接待費
- ■返礼品
- ■お布施
など
【葬儀の形式】
- ■宗教(仏式・神道式・キリスト教式など)/無宗教(自由葬・音楽葬・偲ぶ会など)
- ■密葬(身内のみで行なう葬儀)
- ■家族葬(近親者や親しくしていた友人のみで行なう葬儀)
- ■直葬(火葬のみ)
など
孤独死の場合でも、葬儀の流れは通常と同じです。ただし、発見が遅れてご遺体の損傷が激しいときは、葬儀の前に火葬を行なうこともあります。
4. 身寄りのない方が孤独死したときは?
孤独死される方の中には、まったく身寄りのない方もいます。そのような場合は、法律に基づいて市区町村が遺体を引き取り、火葬を行なうことになっています。遺骨は無縁仏として無縁墓地に納骨されたり、自治体に保管されたりします。
では、それらにかかる費用は誰が負担するのでしょうか?
まずは亡くなった方の遺留金品などが充当されます。不足分は市区町村が立て替え、最終的に県が負担します。反対に、費用に充当してもまだ遺留金品が余るような場合は、金額に応じて国庫に帰属されることになっています。
5. まとめ
孤独死は、当人はもちろんご遺族にとっても心の痛い出来事。自分自身が、あるいは周りの大切な人が孤独死に陥らないよう、前もって対策を立てておくことが重要と言えるでしょう。やむなく身内の方が孤独死という結果になってしまったときには、この記事が少しでもお役に立つと幸いです。