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「孤独死のない社会」をつくるために有効な対策とは?


「孤独死」は、今や誰の身近でも起こりうる深刻な問題です。孤独死の定義が明確でないため、全国での発生数をまとめた正式なデータはありません。しかしある調査(※)によれば、亡くなってから2日以上を経て発見された65歳以上の高齢者は、年間2万6000人以上にのぼると推計されています。さらに、孤独死は高齢者に限った問題ではありませんから、実際の発生総数はもっと多いはずです。

以前、別記事で孤独死の原因について詳しく紹介しました。そこで今回は、原因別の対策について考えてみたいと思います。身内や近隣住民など周りの人々によるサポートと、国や自治体による施策の実行、それら双方の対策が問題解決には欠かせないと思います。

※ニッセイ基礎研究所『孤立死発生確率と全国推計』より

※2009年時点の『東京都23区における孤独死の発生数(東京都監察医務院)』と、2010年版の『人口動態統計(厚生労働省)』を用いて算出

1. 孤独死対策を考える 〜4つの原因別〜

高齢者の孤独死の原因として挙げられる問題は、大きく分けて4つ。

  • ・社会的つながりの低下
  • ・精神面の問題
  • ・経済面の問題
  • ・身体面の問題(病気など)

「孤独死対策」と一括りにするのではなく、それぞれの原因に応じた対策を考えていく必要がありそうです。では、ひとつずつ見ていきましょう。

1-1. 「社会的つながりの低下」への対策

高齢化や核家族化が進む日本では、単身高齢者世帯や高齢者夫婦のみの世帯が急増しています。加えて、「近所付き合いがない」「頼れる身内や友人がいない」といった人間関係の希薄化により、ますます社会から孤立してしまう高齢者が増えています。

孤立状態からコミュニティを築き上げることは容易ではありません。ですが、少なくとも「孤独死に至る前に“気づいてもらえる”状況をつくっておく」ことは、本人または周りの人々の意識次第で可能です。まずは、現状実践されている取り組みやサービスを知り、最大限に活用することが重要になってくると思います。

ただし、中には周囲の支援を自主的に求めない人がいることも事実。「プライバシーが侵害されるのではないか」という不信感や「他人に頼りたくない」というプライドなどさまざまな事情があり、すべての人に一律の対策を講じるのは現実的ではありません。社会的つながりを得るための選択肢をできるだけ増やすこともまた、孤独死対策においては重要と言えるでしょう。

<社会的つながりを保つための取り組み例>

  • ■新聞・郵便・宅急便・牛乳配達などの民間業者による安否確認
  • ■消防・警察・ごみ収集業者などの公的機関による安否確認
  • ■民生委員(厚生労働省から委嘱され、地域のパトロールや援助を行なう人)による台帳作成・安否確認
  • ■電気・水道・ガス・電話などの料金支払いが滞った場合、自治体に連絡が入るサービス
  • ■緊急時に連絡を入れられるコールセンターの開設
  • ■緊急通報装置の設置
  • ■緊急事態をキャッチするシステムの設置
  • ■地域住民と定期的に交流ができるサロンの運営

など

1-2. 「精神面の問題」への対策

社会から孤立すると、一人で悩みを抱えたり無気力になってしまうなど、精神的な負担が大きくなりがちです。別記事でもご紹介したとおり、生きがいを感じていない60歳以上の高齢者の内訳は、「困ったときに頼れる人がいない人」「近所付き合いがほとんどない人」「一人暮らし世帯の人」ほど高い割合を占めています。

孤独死対策01

健康な精神の喪失は、生きる気力を蝕み、やがては身体の健康までもを蝕んでしまいかねません。そのような状況を防ぐために重要なことは、高齢者が「居場所」「生きがい」を感じられるような機会を社会が提供すること。そして、高齢者自身が意識的に「居場所」「生きがい」をつくることではないでしょうか。

<「居場所」「生きがい」をつくるための取り組み例>

  • ■老人クラブでのイベント実施
  • ■地域の人たちが集まって交流や食事をする施設の運営
  • ■マンション住民による交流会の実施
  • ■趣味・文化活動・各種講座など、高齢者向けの生涯学習の実施
  • ■民生委員やボランティアスタッフによる高齢者宅への定期訪問
  • ■学校や幼稚園との連携による、子供たちとの交流イベントの実施
  • ■シルバー人材センターでの仕事紹介

など

1-3. 「経済面の問題」への対策

世帯主が65歳以上の世帯の場合、一人あたりの年間支出は129.4万円(※)。全世帯平均の120.1万円を上回る数値です。しかしながら、現役で働いていた頃と比べて収入は減少。多くの世帯は公的年金・恩給をメインの所得としており、そのほかは稼働所得・財産所得・仕送りなどで賄っている状況です。

孤独死対策02

※総務省『家計調査(総世帯)』(2011年)より

医療や介護サービスを受けるにはお金がかかりますし、生きがいを持つために何か活動をしようにも、やはりお金が必要になることが多いです。経済的に余裕のない生活は、孤独死につながるさまざまな問題を引き起こしかねません。

高齢者の経済問題を改善するには、年金や生活保護などの社会保障制度について考える必要があります。さらに言えば、老後の蓄えを若いうちから準備できるよう、正規雇用の推進や労働賃金の引き上げといった対策も不可欠でしょう。ただし、これらは当然ながら一朝一夕で改善できるものではありません。貧困による孤独死を防ぐために直近で実践できる取り組みには、どのようなものがあるのでしょうか。全国で実際に行なわれている取り組みをご紹介します。

<経済面を支えるための取り組み例>

〜医療・介護〜
■看護師や保健福祉士による高齢者宅への定期訪問
■無料健康相談や無料低額診療サービス
〜住まい〜
■空き家などを活用した、低所得高齢者向けの居住施設の充実(養護老人ホーム、都市型軽費老人ホームなど)
〜食事〜
■地域の飲食店や地方の農家などと連携した、弁当の無料配布や炊き出しサービス
〜その他〜
■衣料品や日用品の無料配布
■温浴施設での入浴サービス
■年金・生活保護手続きの同伴サービス
■金銭管理サービス

1-4. 「身体面の問題」への対策

病気などの身体面の問題は、孤独死に直結する問題です。また、そこまで深刻な病気ではなかったとしても、そこに「社会的つながりの低下」「精神面の問題」「経済面の問題」が絡むことにより、孤独死のリスクが格段に高まってしまいます。

孤独死の死因はさまざまですが、ある調査(※)では、孤独死のリスクが高い人の例として以下のような人が挙げられています。

  • ■糖尿病や脳血管障害の既往がある人
  • ■アルコール関連の基礎疾患がある人
  • ■インシュリンの自己注射、酸素療法、透析療法など在宅治療を行なっている人

また、通院している人や介護サービスを受けている人は孤独死のリスクが高いため、病院・介護施設側はその方々への対策を重点的に行なうべきだという考えもあります。

■介護サービスとの連携

※ケアマネージャーやヘルパーの訪問時、配食サービス時、デイサービスのお迎え時の安否確認など

■通院中断患者への対応

※受診予約日に来院がなかった場合、電話・訪問・家族への安否確認依頼を徹底するなど

■退院患者への容体確認

■気になる患者のリストアップ・訪問

など

※『全日本民医連孤独死実態調査』より

 

2. 各地域で実践されているユニークな取り組み

2-1. 『地域の茶の間』|新潟県

新潟県内に2000ヶ所以上あるとされている、地域住民の交流の場。ある助け合い活動の事務所に、子供から高齢者までが自然と集まるようになったことがきっかけで、1997年より自治会館で月1回の交流の場『地域の茶の間』が開かれることになりました。そして2003年には、常設型の『地域の茶の間』である『うちの実家』第1号がオープン。特別なプログラムはなく、参加者がお互いに交流しながら自由に過ごす場となっているようです。

2-2. 『時間通貨』|静岡県

地域の人々の助け合いを促進するために、特定非営利活動法人『たすけあい遠州』が取り入れた地域通貨。たとえば、お年寄りが隣人に車で目的地まで送ってもらったとき、感謝の意を込めて『時間通貨』を渡す。反対に、得意な裁縫をしてあげたお礼に『時間通貨』をもらう。困ったときに気兼ねなく周囲を頼ったり、困っている人を自主的に助けようと思える環境づくりに一役買っているシステムです。公益財団法人さわやか福祉財団が普及活動を進め、現在では全国に広がっています。

2-3. 『黄色いハンカチ運動』|福井県

毎朝、玄関先に「元気の印」である黄色い旗を掲げるという、集落内の全世帯で実施している活動。老人会有志が区内を見回り、旗の有無で高齢者の安否を確認しているそうです。一人暮らしの高齢者からは「皆さんのおかげで毎日安心して暮らせる」という感謝の声もあがっているとのこと。地域の絆の深さが感じられる取り組みです。

3. 若者の孤独死を防ぐには?

孤独死は、高齢者だけに関係する問題ではありません。東京都監察医務院『東京都23区における孤独死統計(2013年)』によれば、年齢別の孤独死数はグラフのような数値となっており、若者の孤独死事例もゼロではないことがわかります。

孤独死対策03

これまでご紹介したように、高齢者への孤独死対策は徐々に普及してきています。一方で、若者に対する取り組みはまだ一般的ではありません。たとえば、自宅で仕事をするフリーランスや失業中の人が自室で倒れてしまっても、なかなか発見されにくいのが現状です。

若者の孤独死のリスクを減らすには、まず「自己管理」をすることが重要と言えるでしょう。持病のある方はもちろん、そうでない方も日頃から健康に気をつける必要があります。

 

<万一の事態を防ぐための自己管理法>

  • ■十分な睡眠、バランスのよい食事など、規則的な生活を心がけて免疫力を高める
  • ■こまめに体重を測る、便をチェックする、基礎体温をつけるなど、大病のサインを見逃さないようにする
  • ■定期的に健康診断に通う
  • ■かかりつけ医を持つ
  • ■緊急時に備えて、救急相談センター(#7119)やタクシー会社の番号などを携帯電話に登録しておく
  • ※救急相談センターは、「救急車を呼ぶべきか?」「どの医療機関に行けばいいのか?」などの相談に24時間年中無休で対応してくれます。

5. まとめ

孤独死を防ぐための対策について考えてきましたが、いかがでしたか? 国や地域の取り組みを強化していくことはもちろん大切ですが、何よりも重要なのは、本人や家族の孤独死に対する「意識」。「自分には関係ない」「誰かが何とかしてくれる」という考えはとても危険です。万一の事態に備えて、自分にできることから地道に取り組んでいくことが、孤独死のない社会をつくるために必要なのではないでしょうか。

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